肝硬変（かんこうへん）は、肝臓の細胞が慢性的な障害を受けて再生を繰り返すうちに線維化し、肝臓の機能が大きく低下する病気です。初期の段階では自覚症状が少なく、気づかないまま進行することもあります。進行すると、黄疸や腹水、食道静脈瘤の破裂など命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と生活習慣の見直しが重要です。本記事では、肝硬変に対する日常生活での注意点やケア方法について、食事・運動・薬の管理・日常の工夫などを具体的に解説していきます。

肝硬変の基礎知識

肝硬変とは？

肝硬変は、肝臓に慢性的な炎症や障害が生じ、それが長期間続いた結果として肝細胞が壊され、線維組織に置き換わることで起こります。正常な肝臓は再生能力が高い臓器ですが、度重なるダメージにより修復と再生が追いつかなくなると、肝臓全体が硬くなり機能が落ちていきます。

主な原因

• アルコール性肝障害：長期にわたる多量飲酒。
• ウイルス性肝炎：B型・C型肝炎ウイルス感染。
• 非アルコール性脂肪性肝炎（NASH）：肥満や糖尿病と関連。
• 自己免疫性肝炎や胆汁性肝疾患：免疫異常による。

日常生活での注意点

1. 食事管理

肝硬変のケアにおいて、食生活は最も重要な柱の一つです。

• 塩分制限：腹水やむくみを防ぐため、1日の塩分摂取量は6g未満を目標にします。
• たんぱく質のバランス：肝臓の修復や体力維持に必要ですが、過剰摂取は肝性脳症を悪化させることがあります。肉や魚、大豆製品をバランス良く。
• 十分なカロリー摂取：低栄養を防ぐため、炭水化物・脂質も適度に取り入れます。
• 少量多回の食事：夜間の低血糖を防ぐため、寝る前に軽食を摂る「分食」がおすすめです。

2. アルコールの完全禁酒

アルコールは肝臓への負担を大幅に高めるため、肝硬変が診断された時点で禁酒が必須です。少量であっても進行を早めるリスクがあるため、医師の指導のもとで完全に断つことが求められます。

3. 薬の使用と注意

肝臓は薬の代謝を担う臓器です。市販薬やサプリメントでも肝機能に影響する場合があるため、必ず主治医に相談してから使用することが重要です。特に鎮痛剤や漢方薬の一部には注意が必要です。

4. 感染症の予防

肝硬変の方は免疫力が低下しやすく、感染症にかかると重症化するリスクがあります。インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種、手洗い・うがいの徹底が推奨されます。

5. 適度な運動

疲労を感じない程度の軽い運動（ウォーキングやストレッチ）は、筋力維持や血流改善に役立ちます。ただし、無理な運動はかえって肝臓に負担をかけるため、主治医と相談しながら取り入れることが大切です。

肝硬変に伴う症状とそのケア

黄疸

皮膚や白目が黄色くなる状態。進行を抑えるためには、食事療法と禁酒が基本です。

腹水

お腹に水がたまる症状で、強い張りや体重増加を伴います。塩分制限や利尿薬の使用が行われます。

肝性脳症

肝臓で処理できないアンモニアが脳に影響し、意識障害を引き起こす状態。低たんぱく食や薬物療法が必要です。

食道・胃静脈瘤

血流が滞ることで静脈が膨らみ、破裂すると大出血を起こすことがあります。定期的な内視鏡検査で予防が重要です。

合併症のリスクと予防策

肝硬変では様々な合併症が生じます。代表的なものとその予防策は以下です。

• 腹水：塩分制限と利尿剤の使用、適切な体重管理
• 食道静脈瘤：定期的な内視鏡検査で早期発見し、必要に応じて処置
• 肝性脳症：食事の工夫（分岐鎖アミノ酸の補給）、便通の改善
• 肝がん：超音波検査や血液検査による定期的なスクリーニング

ケア方法

家庭でのケア

• 毎日の体重測定で体液の貯留を早期に察知
• 規則正しい生活とバランスの取れた食事
• 医師の指示に従った薬の服用

医療機関でのフォロー

• 定期的な血液検査、画像検査
• 薬物療法の継続
• 必要に応じて入院での治療

重要な注意点:処方薬は必ず医師または医師助手の処方箋をもとに、調剤・購入・使用してください。

治療と生活の両立

肝硬変は完治が難しい病気ですが、治療と生活の工夫により症状を抑え、長期にわたり生活を続けることが可能です。

• 薬物療法：抗ウイルス薬、利尿薬、分岐鎖アミノ酸製剤など
• 肝移植：重症例では肝移植が唯一の根本治療となる場合がある

精神面でのサポート

肝硬変は長期にわたる治療と生活管理が必要なため、患者本人だけでなく家族の支えも不可欠です。病気に対する正しい知識を持ち、ストレスを減らす工夫を取り入れることが大切です。患者会やオンラインサポートグループに参加することで、不安や孤独感を和らげる効果も期待できます。

家族や周囲のサポートの重要性

患者本人だけでなく、家族や周囲の支えも不可欠です。食事の工夫、通院のサポート、精神的な支えが病気の進行を遅らせ、生活の質を守る助けになります。

まとめ

肝硬変は一度進行すると完全に元の状態に戻すことは難しい病気ですが、日常生活の工夫や適切なケアによって進行を遅らせ、合併症を防ぐことが可能です。食事・運動・感染予防・薬の管理といった日々の取り組みが、患者の生活の質（QOL）を大きく左右します。主治医と密に連携しながら、自分に合った生活改善を継続していくことが、妊娠や出産といった人生の目標に挑戦する上でも重要な土台となります。