不妊症に悩むカップルは年々増加しており、特に女性の晩婚化やライフスタイルの多様化により、高齢で妊娠を希望するケースが増えています。 「年齢的にもう無理かもしれない…」と諦めてしまう方も少なくありませんが、医療の進歩により40代後半でも妊娠・出産を実現する方が増えているのも事実です。

高齢と不妊症の現状

1. 女性の妊孕力と年齢

女性は生まれた時から卵子を持っており、加齢とともに卵子の数・質が低下します。

• 30歳を過ぎると妊娠率は徐々に低下
• 35歳を境に急激に妊娠率が下がる
• 40歳以降は自然妊娠が難しくなる

2. 男性の加齢の影響

男性の場合、精子は常に新しく作られますが、加齢とともにDNA損傷や運動率低下が見られます。 そのため、カップル双方に年齢の影響が及ぶことを理解することが大切です。

高齢不妊の課題

1. 妊娠率の低下
2. 流産率の上昇（40代女性では約40〜50％）
3. 染色体異常のリスク増加
4. 体外受精の採卵数・受精率の低下
5. 治療にかかる経済的・精神的負担

これらを踏まえたうえで、諦めるのではなく、適切な治療方針を選択することが重要です。

高齢でも不妊治療をあきらめないための選択肢

1. タイミング療法

排卵日を特定して性交を持つ方法。 → 40歳以上では成功率が低いため、長期的に取り組むよりも次の段階に進むことが推奨されます。

2. 人工授精（AIH）

夫の精子を子宮に直接注入。 → 40歳以上の妊娠率は数％と低いため、短期間で体外受精に切り替えるケースが多いです。

3. 体外受精（IVF）

卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮に戻す治療。 → 高齢でも妊娠率は人工授精より高く、最も有力な選択肢です。

4. 顕微授精（ICSI）

精子の運動率が低い場合に有効。

5. 着床前診断（PGT-A）

染色体異常を持たない受精卵を選別して移植。 → 高齢の流産リスクを軽減。

6. 卵子提供

自分の卵子での妊娠が難しい場合、ドナー卵子を用いた治療も選択肢のひとつ。

実際の成功事例

• 44歳女性、体外受精により妊娠 → 複数回の採卵で良好な胚を得て移植、妊娠継続。
• 46歳女性、卵子提供で出産 → 高齢でも母になる夢を実現。

これらの事例からも分かるように、「年齢＝不可能」ではないのです。

高齢不妊治療における生活習慣の工夫

• 栄養バランスの取れた食事（抗酸化作用のある食品推奨）
• 規則正しい睡眠
• 適度な運動
• 喫煙・過度な飲酒を避ける
• ストレスケア

心理的サポートの重要性

高齢不妊治療は精神的にも負担が大きいため、

• カウンセリングの活用
• 夫婦間での情報共有
• 同じ悩みを持つ人とのコミュニティ参加

が推奨されます。

費用面での課題と解決策

• 体外受精1回あたり30〜50万円
• 顕微授精やPGT-Aでさらに高額

しかし、日本では不妊治療の保険適用が拡大しており、高齢カップルにとっても経済的な支えとなっています。

まとめ：高齢でも不妊治療をあきらめない

• 年齢による妊娠率の低下は事実だが、医学の進歩により可能性は広がっている
• 体外受精・顕微授精・着床前診断・卵子提供など多様な選択肢がある
• 心理的・経済的支援を活用することで、治療を続けやすくなる

「もう遅い」と思った瞬間が、治療を始めるタイミングです。 高齢であっても不妊治療をあきらめず、専門クリニックで相談し、自分に合った治療方針を選びましょう。